○延宝三年刊。橙色、鳥と雷文の文様の空押しの表紙。小豆色無地の見返しとともに後補。四針袋綴装。縦一八・八糎×横一三・六糎。単匡郭、縦一六・八糎×横一二・七糎。四五丁。
○外題、表紙左寄りに金箔散らしの後補題簽、「吉原大雑書」と墨書。内題、「吉原大ざつしよ」。版心、魚尾のある柱に丁付「一」~「四十五」。
○序、なし。跋、「よし吉原のゆふけふりかの君たちにやかれつゝ/こがれ〳〵てのちはみなくゆるはかりのいやまして/さて〳〵かのさまたれさまはなさけなやうらめしや/わがきんちやくのおもきがうちちよもかはらし二世/まてといひしゆふべもあすか川かはるなかれの/ならひとて見しらぬかほしてましませばなどかは/うらみかこたんやみなさる程にどのしよにもさま/〳〵なんじひはんしてよきもあしきももろ/ともにたゝあしさまにいひなせりされとも/是はへんならす又かたからすひいきなく万年(まんねん)/こよみになぞらへて上段(だん)中段下段をばこと〳〵く/あらためてみめよしかみよしおむく日はんげしやう/やうすげしやうしかのあくにんきし〳〵日八せんついり/のふり心どようの入のあつかましさかのよしはらは/うしやたゝ金をとられの方(はう)なればきもん金神(こんじん)/ふさがりぞ今はふつ〳〵あきの方年(とし)徳(とく)しんに/ましはりてふつきとさかへたまふべし/追付(をつつけ)此あとより山茶やふれかさをつくりて/出し申べし」。刊記、「延寶三年卯壬四月中旬」、「壬」は「閏」の略字。
○印記、長方陽刻朱印「雲邨文庫」、和田維四郎旧蔵。長方双郭陽刻朱印「鹿田文庫」、鹿田静七旧蔵。二ウ・三オに吉原の地図。挿絵、七ウ・八オ、一四ウ・一五オ、二二ウ・二三オ、三〇ウ・三一オ、三八ウ・三九オの各見開きにあり。全五図。全体にツカレ。わずかに墨の落書きあり。千葉市美術館『菱川師宣展』に本点を出品(図録104番)。その解説によれば「吉原の遊女評判記。著名はないが挿絵は師宣とみてよい。当該期(一六七五年)の師宣の特徴とその魅力を感得することができる。師宣の吉原物の中では最も早いもの。東洋文庫本は現在確認されている唯一のもの」。『近世文芸資料類従・仮名草子編』第35巻(遊女評判記集中)に影印あり。