○江戸時代前期刊。土色無地表紙、イタミ。四針袋綴装。縦二三・〇糎×横一六・三糎。単匡郭、縦一九・九糎×横一五・三糎。第一冊二九丁、第二冊四五丁。
○外題、表紙中央に金砂を散らした後補題簽紙あり、ただし書名無記。内題、第一冊第一丁オモテに「ふたへそめ木もくろく」。
○第一冊冒頭の「もくろく」に一七項目を挙げ、その後の第三丁ウラに「繪師菱河師宣筆/書林 須藤権兵衛」とある。師宣に関して「又作師信称長兵衛」と墨の書き込みあり。第二冊第一丁オモテに「いにしへのやさ男好色の女/のよみかはしぬる哥そのこと/かきふかき心はいさしらね共/言に顕れたるを所またらに/おしやはらけて書ちらしぬ」と内容を紹介している。
○印記、円型陽刻朱印、印記不明。挿絵はいずれも見開きで、第一冊四面、第二冊五面。ところどころに朱・青の手彩色。各丁のオモテまたはウラのノド下部に、〇に入った丁付あり。両冊見返しに「藤太郎」等の墨の書き込みあり。貴重本刊行会、岩崎文庫貴重本叢刊〈近世編〉第四巻『浮世草子Ⅱ』(一九七四)に本書を底本として影印あり。堤精二氏によるその解説に「本書の成立は不明であるが、序文ともいうべき冒頭の文中に「いてや寛文二年の初春」なる言葉があることは、ある程度、本書の成立を示唆する。」「『ふたへそめ木』という題名は、里見文九郎と小菊の前の両名の間に贈答された艶書集(一・二巻が相当する)に対して名付けられたもので、「にし木ゝにちきりをなすはよにふるわさなれはこれなむふたへそめ木とやいはまし」と述べるように、艶書体小説の『錦木』(寛文元年)のあとを襲う意のあることを示している。」「一面、本書は、絵師師宣の挿絵により娯楽的効果をねらい、事実、巻一・二の構成に表現されているごとく、男女の恋愛の側面をかなりの程度描き上げ、師宣の挿絵と相俟って、娯楽的な面は一層強調されている。」という。『錦木』については【76】参照。